夕方17時を過ぎると、近隣のクリニックから患者さんが一度に押し寄せ、調剤室は戦場のようになります。
特に高齢の患者さんは何種類もの持病をお持ちで、複数の科から10種類以上の薬が出ていることも日常茶飯事です。
一番怖いのは「併用禁忌(一緒に飲んではいけない薬)」の見落としや、腎機能低下時の投与量オーバーです。
疲労がピークに達する夕方に、プレッシャーで胃がキリキリと痛み、「ダブルチェックをしているけれど、人間の目だけに頼っていて本当に大丈夫だろうか」と毎晩不安を抱えていました。
これまでは、分厚い「今日の治療薬」や医薬品添付文書の束を調剤台の上に広げ、疑わしい薬品名があるたびに指差し確認をしていました。
レセコン(調剤コンピューター)にも警告機能はあるのですが、画面の端に小さく文字が出るだけで見逃しやすく、詳細を確認するには一度入力画面を閉じなければなりませんでした。
確認に1件あたり4〜5分かかり、待合室の患者さんをお待たせしてさらに焦る、という悪循環に陥っていました。
そこで作ったのが、「バーコードをかざすだけで、要注意な組み合わせが一目でわかる簡易監査アシスト画面」 です。
薬の箱についているバーコード(GS1コード)をピッと読み取るか、薬品名の頭文字を入れるだけで、
- 今回処方された薬同士の相互作用
- 高齢者への慎重投与フラグ
- 腎機能に応じた代表的な減量目安
が、画面上に大きな文字と信号機のような色分け(赤・黄・青)でパッと表示されます。
実際の調剤現場で動かしている監査システムの簡易Web体験版です。
下の処方パターンボタンを押すか、薬品を追加して「処方監査を実行」ボタンを押してみてください。
現場の安心感が劇的に変わりました。
1件あたりの確認時間は約30秒に短縮。
何よりも、「重大な相互作用があれば画面が真っ赤になって音で知らせてくれる」という安心感があるため、夕方の張り詰めた精神的プレッシャーが大幅に和らぎました。
新人薬剤師や調剤補助スタッフからも「これなら迷わず先輩に質問できます」と好評で、浮いた時間を患者さんへの服薬指導や体調のお伺いに充てられるようになりました。
プログラミングの「プ」の字も知らない私が最初に直面したのは、全角と半角の罠でした。
薬品リストをテキストに入力していたとき、誤って全角スペースを紛れ込ませてしまい、システムが一切起動しなくなりました。
画面には英語の文字がずらりと並び、冷や汗が吹き出しました。
「せっかくここまで作ったのに全部壊してしまったのか……」と夜中の1時まで頭を抱えましたが、翌朝AIにその画面をそのまま見せたところ、
『○行目に全角スペースが混ざっていますよ。半角に直せば動きます』
とわずか1秒で指摘され、脱力と同時にAIの心強さを実感しました。
現在は、調剤台の脇に置いたノートパソコンで常時稼働しています。
大掛かりなサーバーは使わず、ブラウザだけでサクサク動くようにしたため、一度もフリーズすることなく毎日の調剤を支えてくれています。
スタッフみんなで「この薬の注意文も追加してほしい」と付箋を貼り合いながら、辞書データを少しずつ育てています。
現在の仕組みはパソコンの前に立つ必要がありますが、棚から薬をピッキング(取り揃え)しながら手元で確認できるよう、余っているタブレット端末でも操作できるようにしたいと考えています。
画面の文字の大きさを老眼でも見やすいようにさらに調整し、就労支援の仲間にもデータ整備のお手伝いをお願いする予定です。